コーチの道具

2003年1月23日(木)

天気予報では、東京も大雪ということで、1月22日(水)は、FC杉並の練習で「明日は、休み」だと選手にも言っておいた。
ただ1月23日は、夜の9時半以降、Mid Night Meeting(MNM)と称して、世田谷桜新町のロイヤルホストで、サッカーについてあるチームのスタッフと打ち合わせをする、自分だけでなく、このスタッフの人たちも「病 膏肓にはいる」というやつで、良き市民という感じはない。

私のような、コーチのやり方をする(といっても、良くわからないでしょうが、そこは呑みこんでください)者にとって、グラウンドで必携のものは「ホワイト・ボード」である。
この方法は外資企業勤務で覚えた。

あるマネージャーはそれこそ「数字に表せなければ」それを論ずるに足らず、とまで言い放ったし、また別なところでは、図形表示にしてこなければ、無能ということも言われた。
今は例えばパワーポイントのようなソフトがあるので、たいへん楽であるがグラウンドの上でパワーポイントを使うわけにもいくまい、だからそこはアーリーデーズ(古き時代の)テクなのだが、ホワイトボードを駆使する。

週間現代を読んでいたら、
早稲田ラグビーの清宮が、以下のことを書いていた、抜粋だが紹介しておく、

清宮、早稲田就任時に、学生に早稲田と関東学院の強みと弱みを書き出せというアンケート(実際はレポートだろう)を書かせた、そこでは、
関東は「ターンオーバーを奪うのがうまい」といった,プレーの具体的なイメージが湧く言葉がでてきたが、
自分たちのほうは「伝統がある」や「人気がある」といった抽象的な言葉が多かった、つまり選手たちは「プライド」はもっていたが自分たちのラグビーを客観的に把握できていなかったそのためプレーに自信がもてなかったのだと思った。
ぼくは何をするにしても目的をはっきりと決めて取り組ませます,どう言うラグビーをするためのどう言うプレーなのか、試合のテーマを選手に伝えたのもそのためです
練習も根本的に変えました
今までは練習時間が長すぎた、練習量に満足して,自分たちがなんのために練習しているのかわからなくなっていた。
ぼくは練習に何を要求するかはっきりと伝えた
そしてひとつの練習の中に,走りだとか、テクニックだとか「複数の要素をいれることはしなかった」
あれもこれもと欲張ってはだめです。ポイントを絞らないと学生に伝えられなくなってしまう
限られた時間を有効に使うにはポイントを絞ったほうが効果があがります。
練習時間を思いきって2時間と短くした
練習ごとに目的を明確にする
このスキルが身につけば試合でこんなプレーができるというイメージを学生にもたせた。
スキルを積み重ねてこそ勝利を呼び寄せることができるのです。
それまでは枝葉の先までこだわる練習をしていた
相手がしかけてくるサインプレーのすべてに対応するためにさまざまな練習パターンがありました。しかし試合で偶発的なプレーが起きたり、裏をかくようなプレーをされると対応できない、そればかりかショックを受けて自分たちのペースを崩してしまうそれが早稲田の弱点でした。
ぼくは枝葉の先の部分は練習しないと決めた。
枝葉にこだわるより,想定外のことが起きたときにチームとしてどう動くかというおおまかなルールを作った。
幹の部分だけしっかりしておく、ということ
ただ急激な変化は反発を招きやすいそこで学生たちをなっとくさせるためにデータを使った
学生との最初のMeetingが信頼を得る鍵です。
約1ヶ月あった準備期間でなぜ早稲田が勝てなかったか徹底的に分析しそのとき作製したデータを学生に見せて説明した。今の学生は賢いから理屈で説明しないと納得しません、ぼくはデータ=理屈だと考えている,本当は早稲田がなぜ勝てないか、データなしでも言葉でも説明できた。でも学生はデータを見せられたことで,僕をはじめとしたスタッフが、ものすごい時間をかけてチームの建て直しを図っていることに気つ゛いたはずです。学生はデータの向こうにこちらの情熱を見る。こんなに細かくプレーを見てくれる監督なら間違ったことは言わないだろうと選手は信頼してくれた、それでも本当に学生が信頼を寄せてくれるようになったのは,昨季の早慶戦で「30点差をつけて勝つ」と試合前に宣言してそのとおりの結果がでたとき以降でしょう。
2年間勝てなかった相手に、こうボールを動かせば、ここに穴が空くから,トライがとれる、そう理詰めで説明して行ってそのための練習ををずっと積み重ねたそして絶対に勝てると選手たちに話したら,実際そのとおりになった。学生たちは、ここで本当にぼくのことを信頼し始めてくれたんだと思う。やはり実戦で結果を出さないことには本当のの信頼は芽生えません。
僕の発言がブレ始めたら選手の信頼なんて一発でなくなりますよ。だからいつも芯のある話しをしようと心がけていました。選手に話すことはあらかじめ考えて,整理してから話す。

コーチが僕とは違う観点で教えたら、それは学生にとって「監督の発言のブレ」に見えてしまう。
こうしたマネージメントのやりかたは、僕がサントリーの主将のときに、勝てなかった経験がもとになっています。当時,サントリーのラグビー部は仕事との両立を大きなテーマに掲げていたので、練習に全員が集まるのは限られていた。そこで体力面に関しては、個人練習の時間を作って頑張ってくれと任せた。実際には要求した練習に取り組む選手が少なくて,全体的にチームのレベルが下がってしまった。
当たり前ですが、放任すると選手は怠けてだめになる、だから選手を動かすには,リーダーがしっかり選手を把握しないといけない、そうすれば指示も出しやすいし、それが選手、チームパフォーマンスの向上につながる。きちんと管理することでチームの能力が飛躍的に上がるんです。
この仕組みがうまく回転すれば2年で組織を変えられます。1年目は結果を出してもまぐれ,本当の成功ではないかもしれない。でも、そこで成功のきっかけをつかめば2年目は確実に飛躍できる


基本的には「どこにも」けちをつけられない。異種スポーツのコーチにも、参考になる情報である。もっともひとつひとつは解析しないが、自分はあまりデータということは考えない、データにたよればその行きつく先は、「サッカーが痩せる」と思っている、この話しはまたどこかでもどりますが、しかし清宮のように納得させるのは、データではなく「キャラによる」と考えている。

そのうえで、言葉を,清宮のように整理して「芯がある」というのは推定だが、ある観念、あるアイデア、あるコンセプトそういった、ものをかならずグラウンド用語にいれていくということを意味するのではないかと、考えた。あるいはそれらは「ポイントだろう」がかならず話の中央に原子核のようにあって、その核以外の口ぶり、文章、表現それらは、その日,その日によりどうとでも変わるが、その核である「芯」であるポイントである、それらは「変わらない」「変えようのない」いわばスポーツにおける絶対律であると,相川解釈した。

相川の場合は、これをさらにグラウンドでホワイトボードに書く。

言葉は口をでた瞬間に虚空に消えていくからです。
そして清宮が言うように、ひとつの練習のなかにいろいろなポイントをいれてしまうと、能率があがらなくなる、自分はそれを「極端をやれ」という言い方にしてある。つまりこちらのいうポイントに選手をこだらわせる、ということである。他の(清宮のいう枝葉だと思えるが)ニュアンスこそ、実はサッカーである。それを知っているつもりだが、あえてニュアンスを最初はあまり言わない、極端から極端へ選手をふりまわしていく、ただし「いつかは、選手に選択をまかせるぞ」として、また「実際そのとおりにしてはいる」

いずれにせよ、他のコーチが発言してくれて、何か、そこから勉強できる、ということ、これはむろん、望ましいことである。
(この項終わり)